由来ばなし 2001/09/10


     1 うなぎ

 「うなぎ」ちゅうのは、どうして名前が出たか知ってるか。
あれはなあ、むかし「ニョロ」というたもんだ0ニョロニョロしてるからなあ。大ニョロ、小ニョロだ。ところがあるとき、鵜飼いの人が鮎と間違えて、ニョロを鵜にくわえさせたら、口瑞にからまるやら、はねるやら、何ともならないので、鵜飼いは大変難儀してる鵜を見てて言ったそうな。
「あらら、鵜が難儀してる。鵜が難儀で<うなぎ>だなあ」         

山形地方

     2 やかん

 「やかん」はむかし「ブンマゲ」と言っておった。
武将は戦のときにゃ、鎧と兜だが、雑兵には何もない。仕方なくてやかんをかぶって戦いに出た。ところが口が邪魔になるんで、口をとったら、命令が聞こえない。それも困るというんで、口を二つつけて耳にした。こりゃなかなかええというごんで、戦いに出たら、あちこちから矢が飛んできて、カーン、カーンと当たるんで、誰が言うともなく「矢カーン」というようになったもんだ。

山形地方

      3 件(くだん)

 「件」ちめうのはインドの牛の一つだそうな。お釈迦さまが急に病気になったとき、「この癪(しゃく)という病気にゃ、日本に生えてる薬草が一番ええというが、遠くてなあ、誰か行って採って来てくれる者がないかな」
 と言うと、燕が申し出た。
「ほな、お安い御用だ.一飛び十里だから、すぐ行ってもってくる」
 と言って飛び立ったが、途中でペチャクチャ無駄話ばっかりで、帰って来なかった。ところがある日、人のように賢い牛がおって、人々は「件」と言ってたもんだが、それが日本に行っでくれることになった.
「おれはのろいが、きっと帰りますから、待っておって下さい」
 と出て行った。一年、二年、三年と帰って来なかったが、ちょうど九年目にようやく薬草を背中にいっぱいつけて帰って来たと。
「ああ、やっぱりお前は確かだった」
 と、お釈迦さまがほめたそうな。そんで今でも絶対間違いないということを、借金の証文などに「件の如し」と書くことにしたもんだそうな。              

山形地方

    4 またたび

 旅の坊さんが、ある峠にさしかかったところ、くたびれて、峠の上で倒れてしまって、口を開いてふうふう言ってたら、上からボタンと木の実が落ちてきて口の中に入ったもんで、むしゃむしゃと食ってたら、急に元気が出て来た。
「こんで、また旅が続けられるなあ、ほんじゃ、これほ、ふところに入れて行くか」
 というんで、「またたび」というようになったんだと。            

山形地方

     5 とにかく

 「兎みたいに、可愛い顔しておって、足も早いが、どうも何一つ武器を持っていないのは可哀そうだ。あれさ角つけてみたらどうだ」
 ということになったと。それで大きな角をつけてみた。
「こうなりゃちょっとした戦にもまけるざあねえべ。青しし、熊、猿なんて屁とも思わねえ」
ところが、藪を漕ぐことができなくなったばかりでなく、川に入ったら沈んでしまったと。
「やっばり、兎に角つけるちゅうのは、どうもうまく行かない」
 というもんで、それから「兎に角」ということはがおこったそうな。

山形地方

『出羽の笑いばなし』より