自然と私そして漆
Mother Nature,I and Urushi


水上 修
MIZUKAMI Osamu

1994年夏、私は月山山項を目指し赤沢川源流部を遡行していた。ほとんど
人が入らない渓なので自然が多く残っている。清冽な水の流れ、黒い岩肌、
木々の輝き、凛とした空気、それらが私の体の中に染み込んでくる。夜、シュ
ラフに潜り込み夜空を眺めれば、その果てしない美しさは勿論のこと地球が自
転していることさえ感じられる。この晴間の中で動物達も同じ様にすみかで眠
りにつこうとしているのだろうか。
 崖や滝を登り渓を泳ぐ厳しく辛い遡行である。月山山頂に着く頃、体はポロ
ポロに疲れ果てていても、私は自然に順応しはじめている自分の中の生命を感
じた。


 四季折々の自然を体験・体感することによりそのリズムを体の中に吸収し、
そして同化していく。


 漆の艶やかな異には引き込まれそうな魅力がある。渓の夜、漆黒の閣の中に
いる私の体の自然のリズムは漆という素材の力を借りて生まれ出ようとしてい
る。
 息をひそめ私は眠りについた。


 

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