2001/03/04
『玉蘭』 桐野夏生 朝日新聞社 2001/03/01 1800+税
今日は低気圧の影響で雨。
ひさびさに午前様を三日くらいしたので頭はボーっとしフラフラ状態。その状態での読書。
桐野夏生氏のもほとんど読んでいますが直木賞受賞の『柔らかな頬』は読んでいません。以降はこれが最初です。
以前の作品(『OUT』など)はあきらかにサスペンスだったと思いますが、この作品は多分恋愛小説なのではないかと思いました。といっても恋愛小説とはどんなものかもガラでないので分らないのではありますが。また以前の作品はかなりストーリーがストレートだった感じがしていましたが、当作品は場面の展開にしろ心理描写にしろかなりの趣向を凝らしているなあと思いました。
舞台は上海、現在と1920頃がいったり来たりします。
恋愛小説の好きな人には大変けっこうな作品なのでは・・・・・・・・・
それが最果ての最前線になるだろうさ。船乗りは皆、そう思う」「船乗りなんですか」「そうだよ」「あなたは誰ですか」この問いを発した時すでに、有子は男が幽霊であることを承知していた。ここに人間が居るのだとしたら、物の怪であることは間違いない。しかし、もう恐怖は感じない。今の有子にとって一番怖いのは、向き合わなくてはならない自分の心の虚ろの方だったからだ。「あんたの良く知っている人間だよ」男は笑いを含んだ声で答えた。・・・
|