2001/03/18
『症例A』多島斗志之 角川書店 \1900
2000/11/01
多島作品も歴史ミステリーが主だったのでほとんど読んでおりましたが、当作品は発売以来題材に躊躇して、本屋で横目で見ながらずっと買うか買わないかを続けていました。しかし、結局読んでしまいました。1999に『海賊モア船長の遍歴』を読んで以来だと思います。
読み終わってみると「面白かった」です。『離人症』『破爪病』『境界例』『解離性同一性障害』等など難解な精神医学の用語が多々出てきますがそれが読書の妨げにはならないし、かえって知識が身についてためになりまいた。一口で精神病といってもいろいろな病名があり、それぞれ違う症状で療法もまったく違うものが施されているのだそうです。精神分裂症はやはり一番重い病気で治療は難しいものらしいですが、多くは神経症(ノイローゼ)で精神科医の力で治るものとのことです。『境界例神経症』という病名などまったく知りませんでしたが医者が一番困る(疲れる・努力を要する)病気であり分裂症との区別も難しい病気なのだそうです。
一精神科医が主人公で、ある入院患者の少女と、女性臨床技師との会話の場面で話が進んでいきます。同時に自分の勤務する博物館の謎を追いかける女性博物館職員も一方の主人公です。二つのまったく関係のない話が同時進行し、最終的にどうなるのかも読者に楽しみをもたせる手法の小説でした。
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