山形そば黄門漫遊記9
我が仲間うちでは知ってた筈のこの私が、なんと市内で教えられ、うまいうまいに乗せられてとうとう連れて行かれてしまった。
「どうや、うまいだろう、安くて量もあって、希望すればいろんなそばを打ってくれるんやぜ。今日のは特製で90%か100%だな」
世間は広い、うまっかた。
しかし、それよりもまた必ず来るぞという気持ちにさせてくれたのはうれしかった。話には聞いていたが、わざわざ来てみたことは無かった。
特製ということで、我々が注文してからこねて、のして、切って、ゆでて、約30分。不味いはずがあるわけなぁーいじゃあーりませんか。
「100でやる時はもっと時間がある時がいい。昼間は忙しくってうまくいかねぇ」だと。んーじゃ今度昼時が過ぎてから来て食べさせていただきましょうや。にくいねぇーこの親父。そばをこねる器、たいていは木製でその色合いで何かを感じることがあるが、この親父のは陶器であった。面白がって見ていたが、いやいや大したもんだ、なんかこだわりがあるのだろうがちょっと違う。それが何なのか、今日が初めてでは分からない。それを分かるまでは多分何回か、何年か食べに行くだろう。
普通のそばはちゃんと打って、昼時の客は次々と出入りをしていく。それはそれで見るからにうまそうなのに、あえて特製と称して客の我がままを聞いてみるのは何なんだろう。
山形から隣の中山町に向かう112号線、船町のちょっと手前のコンクリート屋の看板に従って右に曲がって200m位かな、何にもない、あとは田圃だけといったほんとのほんとのどっぱずれに、なんとそば屋がポロッとある。銅谷口というところにあるので、銅谷そばというのだそうだ。
そこに行くための案内は全く無い、道案内の矢印看板すら一つもない。間違って通るか、そのコンクリート屋に用でも無ければ、おそらく一生気付かないだろう。
そんな店なのに、昼になるとどっからともなく人が寄って来る。そば食いに。そば屋って一生懸命な親父と、そば好きの自慢話で不思議と人気が出るようだ。山形のそばっていいなぁ、あらためて今日感じたぞ!