山形そば黄門漫遊記10
いつかどっかのお蕎麦屋の旦那さんに、「蕎麦粉だけじゃ蕎麦はできねぇ、第一おいしくねぇ」と教えていただいたことがあった。腹の中で「何年そば屋やってんだ、御託ならべる前に山形行ってそば食って来い」と言いつつ「なるほどねぇ、難しいもんらしいからねぇ」とつき合っておいた。
実際、100%そば粉だけというのは、面倒なものらしい。というのも、打つには打ってもすぐに食べさせないと、乾いてしまいボロボロになってしまうからだそうだ。なんでもそうだけど、つくる人がいて食べる人がいて、そしてうまいものが出来上がる。山形の秋の名物に「いも煮会」というのがある。別に大したものではない。単に川原に集まって、さと芋と牛肉なんかを大きな鍋で煮て、みんなでワイワイ食べて飲むだけ。正統派は馬見ケ崎の川原でやる。どこでやってもいいのだけれど、一番人が集まる所だから一番うまそうに感じる。
そばだって、たまにはマンモスそば屋で食べてみたい気がする。広いところで、人がいっぱいそばを食ってる、もちろん自分も。はっきり言って情緒もへったくれもありゃしない。次から次とお客が来るので打ち手は休む暇もない。どんどん打って切ってゆでて、打ってから口に入るまでどのくらい時間があるだろう。山形から348号で上山市に出たところ、狸森と書いて”むじなもり”と読むそうだ。”たぬきもり”と読む人がまあ普通でしょう。要するにどっちでもいい単なる田舎。この辺り、昔は山元村といったそうだ。ここにある学校は「やまびこ学校」と言われたそうだ。なぜそう言われたかは、そばとは関係無いので、好きな人は調べなさい。
さて、今年は12回目だそうです。この学校を会場に行うそばまつりは、芋煮会のそば版。まず賑やかなこと。10時過ぎる頃から車がじゃんじゃんやって来て、いやいやピーク時には一体何人が体育館で打ちたてのそばを食ってるだろうか。体育館の中で、ズルーっとそばを食う音が響いている感じ、なんとも表現できない空気、香り、音、人間の臭い。
「山元の山麓で晩秋にとれた新蕎麦粉だけで打った100%山元産の生蕎麦です。飾りっけのない素朴な懐かしい田舎の味をご賞味下さい。生ものですので、本日のうちにお召し上がるとおいしくいただけます。」
変な能書付きのおみやげそばもありました。一年に一日だけの大そば屋。皿盛りで700円は高い気もするが、やまびこ学校のためにもなっているかなと思いつつ、まぁ勘弁してやることにするよ、無着先生。そばはうまいよ、来年も来るよ。
そば祭り実行委員会 山元地区公民館内(0236)75−2311