山形そば黄門漫遊記17

 山形のそば屋、なにが特徴かというと何もない、ただ皆よく勉強する。
 どこそこのそば屋のおやじが、どこそこのそば屋で食ってたなんて話をよく聞くし、実際見かけるこも多い。そんな連中のそばを食ってやってるわけなのだから、気に入ったとこはそれなりに応援してやらなければ、三つ葉葵が泣いてしまう。

「助さんや、ざっこやの婆ぁさんの腕は上がったかのう」
「さぁ、しばらく行っていませんのでいかがなもんでしょう」
「まぁたいしたことないでしょうが、久しぶりにでかけてみますか」

てなことで、秋の日にご一行はまたもメッカ大石田へ。

「しかしそば屋のくせになんて生臭い名前なんでしょうかねぇ」
「まぁ婆さんもまだ生臭いんだろうよ」
「そういやぁ、おやじって見たことねぇなぁ」

 大石田、次年子へは行かず駒込なんて標識のあたりから、右手の方へ目をやると田んぼの外れにポツンととんがり屋根の一軒家が見えてくる。

「おぉいばぁさん久しぶり、大盛りで3つ頼んだよ」
「こら、八兵衛、その薫製は売り物だから食べてはいけませんよ」
「なぁにご隠居、こんなの少しくらいかじったってわかりゃしませんよ」
「仕方のない奴ですなぁ、格さん大丈夫でしょうか」
「この前も大丈夫でしたからたぶん大丈夫でしょう」
「何という人たちですか、助さん後で求めておきなさい」
「はいそういたしますが、たしかこの丹生川の漁協のお偉いさんとか、あまりお気になさらない方がよろしゅうございます」

 こんなことを書いているのだから、そばはまだまだ勉強中、でも生臭さは無いし、行くたびに確実にうまくなっている。好きな人は最上川の川蟹のみそ汁をいただくようだ。

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