山形そば黄門漫遊記26
そば屋のおやじ、一般的に愛想の無い人種。でもなんかにその人柄を垣間見ることの出来る一癖二癖ある人たち。店構えだったり、器だったり、置物だったり、勿論そばそのものだったりする。
宇宙人的な感性の人達。おだてるわけではないのだが、面白い人が多い。山形市の東にそびえる龍山の中腹にある西蔵王高原は、テレビ塔が立ち並び、野草園や放牧場、湖沼等、そして市街地を見下ろす展望等、市民憩いの場の一つであります。三百坊というそば屋ができて何年になるでしょうか。
どこぞの旧家を家毎持ってきて建て直し、山を切り開いて渓流プラス庭園をつくり増したそうです。最初は渓流をいかした渓流釣りもやったそうですが、ある日嵐がやってきてメタメタにしてしまったそうで、そばに専念し、もともとあまり愛想のないおやじは、水撒きしたり庭園の手入れに精を出すようになったそうです。勿論そばも打ってます。
半端じゃない広さ、新緑と紅葉の季節はもとより、真夏の昼下がり「掟破りのビール」をいただき醒めるまで縁側で休ませてもらうと、実に満足であります。「御隠居、見て下さいよこの天ぷら、いくら秋だからといったって紅葉の葉っぱですよ。こんなもの食えるんですかねぇ」
「文句を言わずに戴いてみなさい、いやなら残せば良いでしょう」
「いやどうせいけるに決まってるんですよ、春だってわけのわかんない葉っぱ食わされてけっこう美味しかったですからね」
「こういう場所で店をしているからこそというものが、結構あるものなんですよ」
「ところで御隠居、知ってますか?ここでは自前のそば畑があって、自家製の粉で作ったそばも出してくれるんですよ。ただしちょっと高めになりますがねぇ」
「ほほぅそれは知りませんでした。では今日はそちらをいただいてみますかな」
「なぁに御隠居じゃもったいないくらいですよ」
「何か言いましたかな」
「おっといけねぇ、うっかりだ」そばはやや固め、笹の葉を敷いた板に上手に盛り付けがしてあります。香りも味も結構ですが、景色が四季を問わずさらに味わい深くしてくれます。
運が良ければ、カモシカ君なんかに間近に会える事もあります。