山形そば黄門漫遊記34
人に聞いて、「美味いそうだから」と誰かを誘って行ってみて、まぁ7〜8割は紹介してくれた人の御顔を思い浮かべて「ふぅーん、なるほどねぇ」てなことになるもんです。
まぁ間違っても「こんなの紹介して何考えてんだ!?」なんてことは無いもんです。
ところが、一回だけ「無礼者!そばだけに手打ちにいたす」ということがありました。ちょっと前の話になりますが、話だけを聞いていたそば屋に、たまたまそば好きの知り合いと行ってみたのであります。店に入るとそば茶の香りがプーンとしてきます。
真昼を過ぎて居るのに結構お客さんがいます。「これは美味そうだな、当たりだな」と呟いて席に着き、特別大盛りを注文したのでありました。やがてそばが運ばれてきて、どれどれと一口食べて顔を見合わせ、首をひねる。後は黙って食べて、足早に店を出る。「なんだ、あれちょっとひどいんじゃない」から始まって、「頭に来たから残しちゃったよ」とつなぎ、「二度と行かねがらな」まで、30分くらい文句タラタラ。勿論さっそく紹介者へ厳重抗議!
ところがどっこい「うそつき呼ばわりは真に心外、あんたらどっか調子悪いんでないの」まで言われてしまう。
まぁ行かなけりゃいいんだ、と諦めて月日が流れて行きます。そんな日々のいろんな人との話の中で、そば好きなどと名乗ってるもんだから、「あそこ行きました、美味しいですよねぇ」なんてことがよくあります。なんとその中に、あの店が出てくるのです。「とととんでもない」などと言ってはみても、回数が重なり5度6度となると気味が悪くなって「???」となってきます。
そして遂には、どうしても確かめたくなってまたノコノコ出かけてしまったのでありました。また失敗しないように普通盛りで、先入観念の塊となってまず一口、「ん、上等」、「あれっ?」アッという間に食べてそば湯をすする。「あれは何だったんだろうか」ポツリと呟く。「まぁ、たまにはこんなこともあんのかなぁ」と店を出る。
かの紹介者に電話する。「あぁやっと行って来たか。そうやろ、うまかったやろ。体調悪い時行って、まずいまずいとあんまり言いなさんな」とたしなめられる。
行く度に話になる、「あん時はまずかったよなぁ」って。大家さんの前の国道286号線を西に下って4〜5分、右側に「本」と書いた看板が見えてきます。その一本裏通りで、本屋の右奥に見えます。さこんというそば屋です。