山形そば黄門漫遊記44

 山寺に美味しいそばがあると聞いて久しくなります。その時も大分探したのでしたが、残念ながら見つけることができませんでした。それこそ山寺の土産物通りのそば屋まで食べ歩き回ったのでしたが、情報のようなうまいものではなく、ごく当たり前のものばかりでした。
 結局その時はそのままになってしまい、たまに話には出ても新たな情報はなく、時が流れていったのでありました。

 そんなある日のこと、たまたま仕事の関係で一杯やることになった八兵衛さんが、毎度の事ながらいい調子になって、これまたいつもの通りそばの話になった時であります。

「んだ、面白山の食ったごどあっか(そうだ、面白山の食べたことありますか)
「面白山のぉ?さぁ〜」
「んだ、あぁ普通はばあちゃんしてっからなぁ、分がらねがしたぁ(そうか、普段は婆ちゃんがしているから、分からないだろうなぁ)
「芋煮たしたごどあるし、会社の研修で使ったこともあっけんと、別にそばなんて感じなかったげんとなぁ(芋煮会や会社で使ったことはありますが、特にそばがどうこうなんて思いもしませんでしたよ)
「んだっだな、おやじがぶだねどだめったなぁ(そうですよ、おやじが打たないと)
「ほだいじょんだがよ(そんなに上手なんですか)
「んだなぁ、おれもんまいど思うよ(そうだねぇ、私も美味しいと思いますよ)
「ゆうどぶづんだべが(頼むと打ってくれるんでしょうか)
「さぁ、しゃねげんと、おれがらやっだてゆてみっどいいべず。よっくしってっから(わからないけれど、私に聞いたと言ってみたらどうですか?よく知ってる人だから)

 まったく山形のそばはこれだから困ってしまう。人の気も知らないで、趣味半分みたいな店がある。
 本人は普通のつもりでいても、食う方からすればそうはいかない。にもかかわらず、粉屋から打ってもらったのを買ったって大して変わらないと思ってる。いやその方がいいもの出しているという気にさえなっている。まぁたかがそば、大して儲かりもしないのだろうし、ゾロゾロ来られて自由がきかなくなるのも考え物なのかもしれない。などとひがんでばかりはいられない。せっかく探し当てたんだから、なにはともかくまずは一枚いただかねばなりません、なんとしても。
−−−  面白山の巻 以下後編へつづく  −−−

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