山形そば黄門漫遊記45

 もう二十年以上前の話になりますが、あんまりそば好きとは言えない人なのに、ある日「あそこのそばは美味しいよ。あと天ぷらそばなんかこ〜んなでっかなエビが出てきたよ」と教えてくれたことがありました。
 さっそく行ってみたのでしたが、細目でやわらか、タレも薄味でなんか物足りない。要するに”お気に召さず”そのままになっていました。ただ、何かと縁があるようで、不思議とそこで食べる機会がありまして、まぁ忘れない程度には行く店だったのです。

 近年、そば道楽でそっちこっちを食べ歩き、そして自分の好みで人を連れていくものだから、「ちょっと堅いよ」、「太くて食べにくいよ」とか言われても気にすることもなく、ああだこうだと講釈こねくり回していたのです。
 ましてタレが濃すぎて水で割ったりする人には「無礼者め!」なんて味の押し付けをやっていたわけでありました。

 そんなある日、たまたまある事情で予定変更になり、「しょうがない、新力屋でも行くか」ということになりまして、久々2年ぶりに入ったのでありましたが、そこでの連れて行ってやった同行者の暴言いろいろ。

「あら美味しい、いつもと違ってやわらかで食べやすい」
「これだったら、あんたほどそば好きでないけど付き合ってやってもいいよぉ」
「あんたが連れて行くところは、そばは硬いし太くてボソボソするところが多くって、正直付き合いきんないのよねぇ」
「あとほら、タレが濃すぎてだめなのよね、皆が皆って言うわけじゃ無いんだけど、食べにくいのが結構あるのよね」

 「ぶっぶっぶぶ無礼者め!」と言おうとしたけれど、目の前で美味しそうに食べている方々を見るととてもそんな気にはなれません。なるほどねぇ、そばだって個性があるもんだ、おのれはなんと傲慢であったのかと反省反省。いつかこんな事を分かるために、この店にそこそこ来ていたのかなぁと感じさせられるものがありました。
 そういえばいつかまだ私が愛煙家だったころ、店内に禁煙という張り紙を見て「傲慢な店だなぁ」と思ったことがありましたが、今はその張り紙もありません。かわりに地元小学校の校長先生の卒業式での教訓がありました。

春、夏、秋ときて  ”自分を責めるときは冬のように厳しく”  と書いてありました。

 国道13号線を南下、高畠町に入ってちょっとの右側天ぷらもにしんもありました

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