山形そば黄門漫遊記60

 テレビなんかでそばの話が出ると、わりと一生懸命見る方ですが、いつも騙されたような気になるのは私だけではないようです。”信州信濃のそばよりも私しゃあなたのそばがいい”という言葉がありますが、私は山形のそば屋に言ってやりたい台詞だと思っています(ただし側じゃなくって蕎麦)
 「信州信濃の人が聞いたら怒るかな?」と言ったら、「信州信濃のそば屋だって美味い所とそうでない所はあるし、第一食い物は何といっても好みだからしょうがないんじゃない」とおっしゃる方がおりました。まぁそんなもんでしょう、山形だって同じ事なのでしょうから。

 さて、よくある話。とあるそば屋で、いつもの混み合う時間。ここはあんまり間違いのない店なんですが、待ちくたびれたお客さんがイライラしてお怒りのご様子。よりによってそんな時に限って間違いが起きる。今度は間違いなく俺の番だと思った瞬間、
「おまちどうさま、大盛り分はすぐに持って参ります。」と向かい側のテーブルに運ばれてしまう。
 何か言いたそうに首を傾げ、それでもさすが中年、かろうじてじっとこらえて堪え忍ぶ。たかがそばくらいで騒いではおられないといった風情が何となく感じられてくる。そして実際これで終われば何でもなかった。

 声の大きい人に悪い人はいないのだそうだが、小さく話してほしい時がある。
「**ちゃん、3番のお客さんの方が先なんだよぉ、ずいぶん待ってんだよぉ」
「あら〜、んだっけの(そうだったの)、でもしょうないはぁ(やりようないわ)
 聞こえるように言わなきゃいいのに、聞こえてしまう。なんとなく店中になんか気まずい空気が立ちこめる。さらに悪いことに、大盛り分を運ばなければならない。
 食べてる方も気が引ける、悪い事したわけではないのに・・・

「どうなってるんだぁ」
「すみません、今してますから・・・・・」  無駄な会話が交わされる。

 立ち上がって、いったん席に戻るがもう切れている。もうそばどころではない。腹もへってるがどうでもいい。目の前ではホントは自分の所に来るはずだったそばが、ズルズルと他人の腹に入っていく。情けない、悔しい、あぁ腹へった。

「もういいは、帰る」
「すみませんでした」  悲しい結末がやってくる。

 しめしめ、これで俺のが早く来る。予想通りの展開で私の待ち時間がだいぶ短くなりましたが、本日は中年同士の同情という一味余計な物が入って、いまいちでした。
 山形に限らず、こんな時の心構えは必要なようです。保険はありませんので。

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