山形そば黄門漫遊記73

 山形のそば屋さんのある種の集まりなんでしょうか、山形蕎麦研究会というのがありまして、会員さんの店には《そば屋のひとりごと》というそばの豆知識を配っています。いわゆる”余計なお世話”なんですが、ついつい貰ってきて読んでしまいます。
 先日長右エ門に行った時も、待ってる間手にしてしまいました。その7でして、汁について書いてありました。
 曰く、「辛汁(つけ汁)と甘汁(かけ汁)は同じものであってもまったく性質の違うもので、一言で言うと辛汁はからむ汁、甘汁は吸う汁という表現が適当かと思います。」なんだそうです。「ほぉー」と感心してしまいましたが、そうなんですよ山本さん、プロの表現って説得力があるものなんです。

 ここのそば屋は、新聞によれば今のおやじ(と言うほどでもないかな?)のおやじが始めた店で、本格的な(なにをしてこう言うのかはわかりませんが)店にしたのは今のおやじだそうで、山形蕎麦研究会の会長さんもなさった人だそうです。
 そばは二八?の定番と、特製と言って100%?があったのですが、久しぶりに行ってみたら特製はやっていませんで、例の”寒晒し”がありました。
 季節商品は『??』で、いまいちどうも気に入らないもんですので、普通のそばをいただいてきましたが、何と言うのかしっかりしたおいしさでまぁ満足でした。

 ところで、今はやっていませんが、ここはラーメンも美味しい店だったのです。味もスープもすっきりとした、いかにも『そば屋のラーメン』という感じで、私は好きでした。できるものなら特製とともに復活して欲しいものです。

 ここもそうだと聞いたことがありますが、山形のそばやは結構水を選びます。少し行けば名水に不自由しない町ですので、そうなったのかもしれません。山形市の水道水は市の東部は蔵王の水で、西に行けば行くほど最上川の水が多くなっていくのだそうです。
 まぁ東京の足下にも及びませんが、最上川も中流域になりますとお世辞にも水がきれいなんて言えませんで、山形の西部方面は水がおいしくありません。そんな所から水へのこだわりが強くなってくるのだと思います。
 因みにこの店も西部地区にあります。

 山形は扇状地で、店の少し東には山形のお城があり、お堀の水は湧いていたのであります。もちろんこのあたりも、ちょいと前まではそこらここらで水がこんこんと湧き出ており、今では考えられもしないことですが、蛍が飛んでいたのであります。
 そんな昔のこと考えてみると、本来は水だけは何の心配もいらないはずだったのに、水を汲みに行かなければならなくなった理不尽さを感ぜずにはおられなくなりますし、もちろん応援のエールを送りたくなります。

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