山形そば黄門漫遊記80
前に、天童ではかつて将軍様に献上したそばが復活させられて、観光に一役かっているという話をしましたが、山形の寒晒しそばのように”高い”のだったら少しくらい美味いのは”あったり前”ですので、「あまり興味がありません」と申し上げました。世紀末の今年もそんなそばの季節になってきました。
ある日飲み屋でそば談議になった時の事です。献上そばを食いに行こうという話になってきましたが、「そんなイレギュラーどうせ高いんだろうから、わざわざ食いになんか行かないよ」といきがってみせると、「しゃねでヘラヘラゆてんなず(知らないのに話しなさんなよ)」と窘められてしまいました。
「水車さ行ってみろ、600円だ。町なかの店だから税金取られっけんとよ」
「えっそうなの、へぇー欲が無いこと」
「おだぐみだいにやれっから、やっすぐしたんだべ(あなたのように言われるから、安くしたんでしょう)」だそうです。それではということで翌日、揃って昼下がりの天童へ。これも前にちょっと書きましたが、天童には水車そばという店が二つありまして、こちらは町なかの方で水車生そばと看板を出しています。でも、皆さん”き”は読んでくれないようです。大温泉町のど真ん中にありますので、よくあるような《本日売り切れ》とか《釜休み》とかがありません。時間がずれても営業中です。駐車場は裏の方に近年増設になって十分ありますし、観光客なんかがよく目につきます。何せ隣は有名な将棋の駒屋、道路の向かいは有名大旅館。まぁこれはどうでも良いのですが、待つのがいやでしたらチョット時間をずらせば良いと思います。店の中に入ると彼の献上そばのチラシが貼ってあります。何でも2月の6日頃までメニューに入っているようです。
献上そばのザルを頼んでしばらく待つと、見た目普通のと変わらないのが出てきます。
「ふーん」と言ってまず一口「ふーん」と言ってしまいます。
早い話が分かりません。去年山形の寒晒しそばを食べた時もこうでした。要するにもともと美味いそばを出す店で、いつもとちょいと口当たりの変わったそばを出されただけ、と言った感じなんです。
例えばこの店で普通出すそばは、もっと黒っぽく、もう少し太めの感じがするやつなんです。それに比べるとさすが上品とでも言うのか、見た目もやや白っぽく、かおりの甘さも歯がかりもしっかりしておりますが、どこかやわらかな感じがします。これで通年出す店があったら、それはそれでけっこう受けること間違いなしかと存じます。最大の問題であったお値段は、情報通り600円でした。私はこの店本来のそばの方が好きですが、まぁいいでしょう、そばもたいへんよくできておりましたことですし。