山形そば黄門漫遊記13

 山形そば黄門漫遊記、今日ははるばる大石田へ。一大有名そば部落の次年子へは行かず、ちょいと手前をまっすぐ進むとやがて左手に一件のそば屋が見えて来る。
 わらぐち蕎麦という下手な看板が目につく。そもそも在るのは知っていたが、どうしても次年子に行ってしまって来る機会が無かったのである。もっとも比較的新しい店ということもあるが。

 さて、一年ほど前の冬のある日、黄門様ご一行が大石田にかかると雪が一段と激しくなってきてしまったのであります。それでもわざわざ来たのだからなんとしても行かねばならぬと次年子を目指したのであります。
 しかし山にかかる頃雪はさらに激しくなり、さすがのみんなも”いやいや大変な時に来てしまった”と心配になって来たのであります。

「助さん格さんどうしたもんかのう」
「ご隠居、そりゃあこんな日に行けば混むこともないでしょうが、この雪ちょいと止みそうもないし、帰りのこともありますので次年子はまたにして、本合海の方に抜けるのが正解と存じます」
「悔しいがそうすることにしましょうか」

 こうして、次年子まであと一息の所まで辿り着きながら一行は諦めて道を急いだのであります。
 ところが、少し進むと何と雪の中にそば屋があるではありませんか。雪道の運転に疲れ、七兵衛そばにありつけなかった八兵衛さんは、それこそ黙ったままそのそば屋に乗り付けてしまったのであります。

 雪が激しく降って、他に客は誰もいないし誰も来ません。ガラス戸越しに見える向い側の吹雪の山は、まるで山水画の世界、Good!Good!Very Good!それこそ静かで雪の降る音が聞こえて来る。
 やがてそばの香りが・・・ Good! んまいんだず!
真冬に吹雪を見ながら和やかにそばを食う。
 心身満足豊かな気分「助さん格さん参りましょうか」

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